朝礼8分前。南窓から朝日。芽依は楽器ケースを机の脇に置いて、何か考えている。
愛梨「朝からか。吹奏楽部、朝練ないの?」
芽依「あ。いえ、放課後です。楽器が...気になって。」
愛梨は返答の間取りを聴く。何か感じ取ったような顔。だが言葉に出さない。
美咲「昨日の配信、『月明かり』の話。ずっと頭に残ってる。」
莉子「図書室の返却期限。明日で三冊切れます。」
愛梨「莉子、ずっと忙しいな。そういうの誰が頼むの?」
莉子「図書委員の仕事ですから。普通です。」
朝礼の予鈴。全員が立ち上がり始める。
翔太は昇降口の長椅子に腰掛け、紺の上履きに履き替えている。
翔太「わ、蓮。こんなに朝なのに生きてるな」
蓮は階段方向に向かい、翔太の脇を通り過ぎる。
蓮「…え。おはよ」
悠は靴箱の前に立ったまま、ポロシャツの裾を整えている。
翔太「な、な。返事ちゃんとするとは珍しい」
蓮は階段を上り始め、その姿は昇降口から見えなくなる。
翔太「あ、ちょっと。英語の宿題やった?」
答える声はない。翔太は靴を履き終える。
朝礼後、購買部。伊藤七海は弁当売り場の前で立ち止まっている。林陽菜は飼育委員関連の何かを買っている。佐々木蓮は奥で商品を見ている。
小林 翔太「七海。毎日弁当か。」
伊藤 七海「毎日これ。」
林 陽菜「翔太、翔太。ウサギの毛並みいいって、飼育委員会で。」
小林 翔太「俺、飼育じゃねえし(笑)。」
hina は「あ、違う」という表情をした。ren は売り場で何かを手に取った。
伊藤 七海「誰の話?」
林 陽菜「部屋番号の人。ごめんね。」
小林 翔太「朝は返事する。なんで。」
佐々木 蓮「...ポテトでいい。」
nanami は会計へ。他の三人も後をついた。
教室の窓際。朝日が斜めに入り、空は淡い。芽依は窓枠に肘をついて外を見ている。
美羽「あ。いた」
芽依が振り向く。美羽は手に手帳を持っている。目は合わない。
芽依「おはよう」
美羽「……新学期、もう2週目ですね」
芽依が窓の方に視線を戻す。返事をしない。
美羽「手芸部で新しい子が。…あ、いや。別に」
美羽も窓の外を見始める。二人並んで、朝日の中にいる。
芽依「……そう」
商店街の人通りの中。大輝と芽依が並んで歩く。
大輝「今日の昼休み、莉子見なかったな」
芽依「そう?」
大輝は落ち着かない。芽依は視線を前に向けたまま。
大輝「何か最近、奴の様子がおかしくないか」
芽依「...いつも通りだと思うけど」
返答の間。芽依は歩く速度を変えない。
大輝「そっか。気のせいか。お疲れってことか」
芽依「そういうことかもね」
商店街が終わる。二人は別れ道に差し掛かった。
大輝「陸いる?」
陸「なに」
大輝「芽依最近何か変じゃね」
スマートフォンが一度暗くなる
大輝「昼とか何してた?」
陸「別のやつと何かやってた」
返信までに一呼吸
大輝「そっか」
愛梨「朝さ。返答の間に見えたんだけど」
莉子「何が」
愛梨「誰かがさ。楽器じゃなくてもっと重い何か」
莉子「あ。思い当たることある」
愛梨「でも秘密だからね。言えない」
スマホを枕に放り投げて、天井を睨んだ。明日昼休みに何か話せればいいか。
言葉にしないのが。いちばん安全